「職場の対話に関する定量調査」を発表 本音・本心によるコミュニケーションは、職場の変化・改善・革新を促進する

プレスリリース要約

職場内のコミュニケーションに関する調査では、上司との面談で51.2%、チーム内の会議で52.1%の従業員が、本音をほとんど話していないことが明らかになった。さらに、本音で話せる相手は50.8%が職場内に1人もいないと回答し、職位によって対話についての認識に大きな違いがあることも示された。調査結果から、対話不足による影響や本音が話せない要因などが示唆され、上司向けの対話トレーニングだけでなく、組織全体の状況やメンバーへのアプローチを含めた包括的な対策が必要とされている。詳細は以下のURLよりご確認ください: https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/dialogue-culture.html

上司との面談で51.2%、チーム内の会議で52.1%が、本音は「2割未満」と回答。

過半数以上の従業員が、上司面談・会議において本音・本心をほとんど話していない。

■背景

 近年、企業内の人事管理の様々な場面で、 対話的なコミュニケーションの重要性が着目されています。1on1などの定期面談やキャリア面談、キャリア・コンサルティングなど、表層的ではない互いの本音や本心を提示し合うコミュニケーションを必要とするシーンは多く、「心理的安全性※1」という概念への注目も高まっています。

しかし、「対話」的コミュニケーションへの着目に比して、実践的な課題は山積しています。本調査では、職場内の対話を巡る現状や課題を現場レベルで明らかにすることで、状況を打開する糸口を見つけ、より対話的で円滑なコミュニケーションを促進する一助となることを目指します。

※1:組織の中で自分の考えや気持ちを安心して発信できる状態

■主なトピックス ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください

<職場内コミュニケーションの実態>

 1.     職場での会話機会のうち、本音で話せている割合を算出すると、上司との面談で51.2%、チーム内の会議で52.1%が、2割未満と回答。 過半数以上の従業員が、上司面談・会議において本音・本心をほとんど話していない

2.     本音で話せる相手は、職場内に「1人もいない」が50.8%で、他の選択肢と比べ圧倒的に高くなった。「同年代の同僚」が25.6%、性別・年齢は「同年代の同性」が43.6%。

3.       職位によって、職場の「対話」についての認識ギャップが極めて大きい。一般社員・従業員はあまり本音を出せていないと感じているが、事業部長層や役員などの上位役職者は、職場メンバーも自分自身も本音で話せていると感じている傾向が強い。また、一般層の本音のコミュニケーションとして「上司・経営に対する『愚痴』」が、極めて多い。(自由回答)

<本音が話せない要因>

 【個人編】  

4.     本音を話しにくい相手の特徴として、「自分への無関心(そもそも自分の話に興味がなさそうだ)」が最も高い。次に「意図しない相手に話が伝わってしまいそうだ」といった「漏洩不安」が高い傾向。

5.     本音で話しにくい人の特徴を属性別に見ると、すべての特徴において「上司」が最も高い。「漏洩不安」は同僚、仕事関係の知人でも高く、「詐欺的態度(わかっているフリやウソをつかれそうだ)」はカウンセラーでもやや高い。

6.     本音で話せる人の特徴は、話を親身に聞いてくれるといった「傾聴的態度」が高い。一方で、「話す頻度が多い」といった環境的な要因は低い傾向にある。

【組織編】

7.     従業員は、職場で本音を話すことについて、主に6つのリスク「裏切り者リスク(組織に愛着が無いと思われそう)」「拡散リスク(意図しない範囲に広まりそう)」「低評価リスク(自分の評価が下がりそう)」「身分不相応リスク(自分の立場では言えない)」「無関心リスク(真剣に受け取ってもらえなさそう)」「関係悪化リスク(相手との関係が悪くなりそう)を感じている。

8.     性年代別では、女性の30₋40代は全体的にリスク意識が強い。特に女性は「身分不相応」リスクの意識が強く、男性30₋40代は「裏切り者」リスクを強く感じている傾向が見られた。

<対話がもたらす影響> 

 【個人編】

9.     社内の本音コミュニケーションの度合いが高い層が、はたらく幸せ実感、ワーク・エンゲイジメント、ジョブ・クラフティング※2、個人パフォーマンスが高い傾向。  

※2:従業員が主体的に自らの仕事を再定義し、創意工夫をする概念

10.     個人の本音コミュニケーションの割合は、他者の本音/自己の本音への関心と正の相関関係にあり、その2つの関心がともに高いほうが本音コミュニケーションの割合が最も高い。

【組織編】

11.     本音で話せるコミュニケーション度が高い職場ほどメンバーの知識・関心に対するメタ知識(知識や思考プロセスに対する認知・管理・活用)が蓄積し変化抑制意識(職場で変化を起こすことの負荷)を低下させている傾向が見られた。それにより、アンラーニング(それまでのやり方や考え方を変えること)がより多く起こっている様子が見られた。

   

   
■主なトピックス(詳細)

<職場内のコミュニケーションの実態>

 1.    職場での会話機会のうち、本音で話せている割合を算出すると、上司との面談で51.2%、チーム内の会議で52.1%が、2割未満と回答。 過半数以上の従業員が、上司面談・会議において本音・本心をほとんど話していない。

2.    職場内の本音で話せる相手を聴取した。職場内に「1人もいない」が50.8%と圧倒的に高くなった。属性としては「同年代の同僚」が25.6%、性別・年齢は「同年代の同性」が43.6%。

3.     職場内の職位によって、職場の対話状況への認識ギャップが極めて大きい。一般社員・従業員は本音を出せていないと感じているが、事業部長や役員は職場メンバーも自分も本音で話せていると感じている。

<本音が話せない要因>

 【個人編】 

 4.    本音で話しにくい人を特定し、その人の特徴を聴取した。カテゴリ別に見ると最も話しにくい相手の特徴として、「自分への無関心」が最も高い。次に「意図しない相手に話が伝わってしまいそうだ」といった「漏洩不安」が高い。

5.     本音で話しにくい人の特徴をヒートマップで属性別に見た。すべての特徴で「上司」が最も高くなっていた。「漏洩不安(意図しない相手に話が伝わってしまいそうだ)」は同僚、仕事関係の知人でも高く、「詐欺的態度(わかっているフリやウソをつかれそうだ)」はカウンセラーでもやや高い。

6.     本音で話せる人を特定し、その人の特徴を聴取した。カテゴリ別に見ると、話を親身に聞いてくれるなどの「傾聴的態度」が高い。「話す頻度が多い」といった「環境的な要因」は低い傾向にあった。

【組織編】

 7.     従業員は、職場で本音を話すことについて、主に6つのリスクを感じている。 

8.     年代別に見ると、「低評価リスク」は30₋40代、「無関心リスク」は40-50代で特に影響していた。20代は「自分の立場では言えないことがある」といった「身分不相応リスク」、50₋60代では「拡散リスク」が本音度を下げている傾向が見られた。

<対話がもたらす影響> 

 

【個人編】

 9.    社内の本音コミュニケーションの度合いが高い層が、はたらく幸せ実感、ワーク・エンゲイジメント、ジョブ・クラフティング、個人パフォーマンスが高い傾向。(※3層分割による高層・低層比較)

10.     本音コミュニケーションの割合は、「他者の本音への関心」、「自己の本音への関心」の両者と正の相関関係にある。その両者がともに高いほうが本音コミュニケーションの割合が最も高い。

【組織編】

 

11.     本音で話せるコミュニケーションは、「誰がどの領域に詳しいか」といったメンバーの知識・関心に対するメタ知識(トランザクティブ・メモリー)を蓄積し、変化抑制意識を低下させることで、アンラーニング※3が起こりやすくなっている傾向が見られた。

※3:それまでの知識を捨て、やり方や考え方を変えること

■調査結果からの提言

「対話」の重要性が指摘される昨今だが、多くのビジネスの現場が「本音」「対話」の欠如したコミュニケーションで覆われていることが本調査で明らかになった。上司面談や会議の場において本音で話せている割合は過半数が2割未満であり、本心を出さない従業員は、仕事での工夫やはたらく幸せ実感も低い傾向にある。本音のコミュニケーションが無いと、「どのメンバーが何に詳しいか」といった組織への知識が蓄積されず、業務プロセスの改善にもつながっていない。

なぜ従業員は職場で本音を話せなくなるのか。本調査で示されたのは、「組織に愛着が無い」と思われる裏切り者リスクや、自分の評判が下がるかもしれないという低評価リスクなどの6つのリスク意識が従業員を本音から遠ざけていることだ。同時に、「キャリアの主体性」が無い、「時間の裁量権」が無い、「業務の自律性」が無いといった組織の状況が、それらのリスク意識を高めていることも示唆された。 

また、本音で話せない職場で働いている者は、他者との対話への関心や自身の本音への関心も低くなっており、ますます対話から遠ざかってしまう構造が示唆された。本音で話さないことが当たり前になってしまえば、そもそもの対話への関心が失われていく可能性がある。

対話を促進したい組織は、こうしたリスクを感じさせない状態を構築することが必要になるが、現在多く行われている上司向けの対話に関するトレーニングだけでは、こうした要因を取り除くことは難しいだろう。組織レベルの要因が放置されるだけでなく、上司部下の間にある対話への「認識ギャップ」が埋まらないからだ。

組織内の対話の質を高めるには、上司へのトレーニング内容を簡易的にメンバーにも伝えたり、e-learning化したりするなど、全社的なメッセージ発信やトレーニングが必要である。また、キャリアや業務において主体性を発揮できる状態であるのかも、上司以外の人材マネジメントの変革を必要とする。リーダーシップに過度に期待することなく、フォロワー(メンバー)へのアプローチを含めた包括的な手段を検討したい。

                                     
“本音で話せない職場”の創られ方

リーダーシップからフォロワーシップへ

対話コミュニケーションの促進を「上司トレーニング」に依存せず、フォロワー(メンバー)へのアプローチ

本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。

●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。

 URL: https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/dialogue-culture.html

●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。

■調査概要

■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について

パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。

■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。

人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。

はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。

引用元:PR TIMES

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