【調査報告】「2023年 日本医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」

プレスリリース要約

日本医療政策機構が2023年に実施した調査では、日本の医療に対する満足度の増加が示されたが、医療機関へのアクセスについての満足度は低下した。また、生成AIの医療利用に対する関心が高まっている一方で、その利用率は12.2%にとどまり、医療事故時の責任所在に対する懸念も指摘された。この調査結果から、今後の日本の医療政策においては、医療へのアクセス改善や生成AIの活用に対する検討が必要とされているとの示唆がある。

【調査項目概要】

  1. 人口統計学的項目:年齢、性別、居住地(地域)についての設問 
  2. 医療の満足度:現在の日本の医療および医療制度に関する全体的な満足度から、医療アクセス、医療安全、医療制度への意志決定などについての設問(2006年より実施)
  3. 生成AI:AI・生成AIの利用実態や医療分野での利活用に対する関心、期待そして懸念事項についての設問

 【主な調査結果】 

医療の満足度

  • 日本の医療の全体的な満足度を尋ねる項目において66.9%が満足(「大いに満足」および「満足」を合計)と回答。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前に当機構で実施した2019年調査の62.0%と比較し微増(62.0%→66.9%)
  •  全体の満足度は上昇しているものの、「医療機関へのアクセス」については減少(医療機関へのアクセス:64.7%→51.1%)

生成AIの医療応用 

  • 生成AIの利用率は12.2%(母集団:20歳以上の日本人男女) 
  • 生成AIの医療応用に32.7%が「関心あり」
  • 生成AIの医療応用として半数を超える回答者(51.1%)が医療の効率化に期待
  • 生成AIの医療応用への印象、半数が「どちらでもない」
  • 生成AIの活用に伴う懸念は医療事故等が発生した際の責任の所在に関するものが最も大きく、60.6%の回答者が「やや懸念」または「強く懸念」

  

【調査結果から考えられる今後の日本医療への示唆】 

  • 医療の満足度がCOVID-19パンデミック前後で変化がなかったことは、我が国における医療機関によるCOVID-19対応が評価された結果であると考えられる。しかしながら、その内訳として医療へのアクセスに対する満足度が低下しており、COVID-19による受診抑制やそれに関する報道が意識されたことも影響している可能性がある。今後日本の医療政策においては医師の働き方改革や、かかりつけ医機能の報告制度など、医療へのアクセスに関する状況が大きく変化する可能性がある。医療へのアクセスに対する満足度の低下が今後我が国においても医療制度全体への満足度にどのような影響を与えるのか注視していく必要がある。
  • こうした現状の中、医療の効率化やサービスの向上に向け生成AIへの期待は高まっている。
  • 生成AIは医療者が利用することによる医療サービスの改善や、患者が利用した医療情報へのアクセスの向上など幅広い医療への応用方法が模索されている。こうした生成AIの医療応用への関心は年齢に関係なく、今後の活用にむけた検討を進める必要がある。
  • 一方、生成AIに対する印象は「どちらでもない」という回答が半数を占める現状において、技術の内容やその活用メリットに関するコミュニケーション不足が要因でデジタル技術不信や断絶を深めることは想像に難くない。生成AIを利用した医療においては、医療事故時の責任の所在を明確にすることをはじめ、個人情報についてのルールづくり、運営主体の明確化等を通した制度整備を急ぎ、医療の効率化と信頼を両立した運用が求められる。

  

【調査概要】 

調査期間:2023年12月4日から2023年12月7日

形式:オンライン調査

合計配信数:13,004名

調査回答者数:1,502名(回収率11.55%)

回収数:1,000名(有効回答者数が1,000名に到達した時点で終了)

対象:20歳以上の日本人

サンプリング:年齢階級、性別、居住地により調整

本結果に対して津川友介氏(日本医療政策機構 理事/カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部(内科)・公衆衛生大学院(医療政策学)准教授)は下記のとおりコメントしています。

「日本人が日本の医療制度をどのように評価しているのかわかる貴重な調査結果だと思います。特徴的だったのが、医療の質や安全性に対する満足度が4年前と比べて改善している一方で、医療機関へのアクセスや医療制度の平等性に対する満足度が大きく低下していることです。待ち時間の長さや窓口負担などにより、医療機関にかかりたくてもかかれない人がいることを示唆していると思います。生成AIに関心はあるものの、実際に利用したことがある人が12%にとどまったのも特徴的だと思いました。特に医療に生成AIを活用し医療事故が発生した場合の、責任の所在に関して懸念を持っている人が多いという結果でしたので、国民的な議論が必要だと思います。」

調査結果の詳細については当機構のウェブサイトをご覧ください。

https://hgpi.org/research/hc-survey-2023.html

■日本医療政策機構とは:

2004年に設立された非営利、独立、超党派の民間の医療政策シンクタンク。市民主体の医療政策を実現すべく、中立的なシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供しています。特定の政党、団体の立場にとらわれず、独立性を堅持し、フェアで健やかな社会を実現するために、将来を見据えた幅広い観点から、新しいアイデアや価値観を提供しています。日本国内だけでなく、世界に向けても有効な医療政策の選択肢を提示し、地球規模の健康・医療課題を解決すべく、活動しています。

引用元:PR TIMES

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