細菌感染に対する自然免疫を制御する仕組みを原子レベルで解明

プレスリリース要約

熊本大学の研究チームは、TIFABがTIFA-TRAF6シグナルを制御する分子機構を原子レベルで解明した。この研究により、TIFABがシグナル活性化を抑制し、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病に関連する可能性が示唆された。今後、この発見は関連疾患の研究に活用されることが期待され、また、免疫系細胞におけるTIFA-TRAF6シグナル抑制の研究にも役立つとされる。研究成果は米国の科学誌PNASに掲載されている。
【概要説明】

 NF-κBは、ヒトの自然免疫に関わる重要な分子であり、細菌感染などによって活性化されることで免疫反応を引き起こします。TIFAとTRAF6は、NF-κB活性化に関わるシグナル分子として発見され、このTIFA-TRAF6シグナルは細菌感染に対する新しい自然免疫シグナルであることが明らかにされていました。
 今回、熊本大学大学院生命科学研究部 (薬学系) の中村照也 准教授、藤田美歌子 特任教授、立石大 客員准教授 (平田機工株式会社 遺伝資源研究開発グループ 主任)、東京大学国際高等研究所新世代感染症センターの井上純一郎 特任教授、尚絅大学・尚絅大学短期大学部の山縣ゆり子 学長らの研究グループは、TIFAの働きを阻害するシグナル分子として発見されていたTIFABが、TIFA-TRAF6シグナルを制御する分子機構を原子レベルで解明しました。TIFABは、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病に関与することが報告されているため、本成果はこれら疾患の研究に役立つことが期待されます。
 本研究成果は、令和6年3月5日に米国の科学誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaにオンラインで発表されました。本研究は、日本学術振興会卓越研究員事業、科学研究費助成事業 (21K06514)、公益財団法人 武田科学振興財団の支援を受けて実施されました。また、本研究でのX線回折実験は、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 放射光共同利用実験 (2021G031, 2023G036) として実施しました。

【今後の展開】
 本研究により、TIFABがシグナル活性化に関わるTIFAのホモ二量体化を阻害することでシグナルを抑制することが明らかになりました。TIFABの機能不全は、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病に関与することが報告されているため7, 8)、本研究で解明したTIFABの分子機構がこれら疾患の今後の研究に活用されることが期待されます。また、TIFABはB細胞などに多く存在しているため、免疫系細胞におけるTIFA-TRAF6シグナル抑制の研究にも役立つことが期待されます。

【論文情報】

論文名:TIFAB regulates the TIFA-TRAF6 signaling pathway involved in innate immunity by forming a heterodimer complex with TIFA.

著者:Teruya Nakamura (責任著者), Chiaki Ohyama, Madoka Sakamoto, Tsugumasa Toma, Hiroshi Tateishi, Mihoko Matsuo, Mami Chirifu, Shinji Ikemizu, Hiroshi Morioka, Mikako Fujita, Jun-ichiro Inoue, Yuriko Yamagata

掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

doi:10.1073/pnas.2318794121

URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2318794121

▼プレスリリース全文はこちら

 https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei/20240301

引用元:PR TIMES

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