北海道スペースポートで小型ロケットの弾道飛行試験に成功|ロケット量産化技術の獲得へ、革新的固体燃料LTPの飛行を実証
プレスリリース要約
LTP-135sロケットは、固体ロケット量産化技術の獲得を⽬指して開発している⾰新固体ロケット燃料(低融点熱可塑性推進薬、Low melting temperature Thermo-plastic Propellant、以下LTP)を使用した小型固体ロケットで、本試験が3回目の弾道飛行試験となりました。
また、森田専任教授によるHOSPOでの試験は今回が初めてです。
本試験ではLTPがロケット打上げの加速度環境下で正常に燃焼することを確認しました。
大樹町とSPACE COTANは、世界の宇宙ビジネスを支えるインフラとしてロケット開発環境を提供し、国内における自立的な宇宙アクセスの維持・拡大や、国内外の宇宙産業の発展に貢献してまいります。
- 試験概要
目的 :LTPを使用したロケットの加速度環境下での飛行実証
試験日 :2024年3月17日
場所 :北海道スペースポート 滑走路
試験結果:ロケットはHOSPO滑走路から東南東⽅向に打上げられ、LTPは正常に燃焼し、予定通り最⼤⾼度(約5,000m)付近でパラシュートを開傘、機体データを送信した。
本試験は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)宇宙科学研究所の森田泰弘専任教授が株式会社植松電機に打上げ業務を委託し、株式会社IHIエアロスペースと株式会社IHIエアロスペースエンジニアリングの協⼒のもと実施しました。
- LTP-135sロケット 概要
全長:1783mm
外径:135.4mm
重量:24.5kg
LTP-135sロケットは日本学術振興会の科学研究費補助⾦事業(*1)の⼀環として森⽥専任教授が関連メーカ及び⼤学等(*2)の協⼒を得て開発した小型固体ロケットです。
- LTPとは
固体ロケット燃料の製造期間を従来から10分の1に短縮し、⼤幅な低コスト化と量産化を可能とする革新的な固体ロケット燃料。LTP技術に関しては、森田専任教授を中心に過去2回のロケット打上げ実験が⾏われ、今回は3回⽬の実証となります。
- 背景 政府支援により民間のロケット開発が加速。民間が使える宇宙港の必要性が高まる
世界の宇宙市場は、小型人工衛星を活用した民間宇宙ビジネスなどが拡大し、2040年には現在の3倍近い110兆円を超える巨大市場に成長すると予測されています。小型人工衛星の打上げ需要とともに、ロケット等の宇宙輸送サービスの需要も高まっていますが、宇宙輸送サービスが不足しており、業界のボトルネックとなっています。国内では、基幹ロケットの打上げ回数が少なく、民間の商業衛星の打上げは海外ロケットに依存している現状です。
こうした中、2023年6月に閣議決定された宇宙基本計画(*3)では、他国に依存しない宇宙へのアクセス確保・自立的な宇宙活動の実現が示されました。その具体策として、文部科学省による民間スタートアップの支援制度「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金)(*4)」により、宇宙輸送分野に5カ年・350億円が配分されるなど、政府による民間ロケットの開発・実用化を支援する動きが加速しています。
また、今年1月にはJAXAの無人探査機「SLIM」が月面着陸に成功、2月にはJAXAのH3ロケット2号機の打上げが成功、3月にはスペースワン株式会社による小型ロケット「カイロス」の打上げが行われるなど、官民の宇宙開発・利用が活発化しています。
民間が利用できるロケット発射場や実験場の必要性は高まっており、HOSPOは民間に開かれた商業宇宙港として、様々なロケット事業者にロケット開発環境を提供してまいります。
- 会社、団体概要
北海道大樹町
代表 :町長 黒川 豊(くろかわ ゆたか)
所在地 :北海道広尾郡大樹町東本通33番地
事業概要:人口5,400人の一次産業が基幹産業の町。昭和59年の北海道大規模航空宇宙産業基地構想で航空宇宙基地の適地とされ、以降40年近くにわたり宇宙のまちづくりを推進し、HOSPOを本格稼働。北海道スペースポートを核とした宇宙版シリコンバレーの形成を目指します。
WEB :https://www.town.taiki.hokkaido.jp/
SPACE COTAN株式会社
代表者 :代表取締役社長兼CEO 小田切 義憲(おだぎり よしのり)
所在地 :北海道広尾郡大樹町西本通98
事業概要:大樹町からの委任に基づくHOSPOプロジェクトの推進業務全般(スペースポートの管理運営、整備資金調達支援、射場設計、国の認定取得、国内外顧客開拓、PR活動等)を実施しています。
WEB :https://hokkaidospaceport.com/
- 北海道スペースポート(HOSPO)とは
HOSPOは、2021年4月に大樹町で本格稼働した民間にひらかれた商業宇宙港です。大樹町はロケットを打上げる東と南方向に海が広がり、広大な土地によるロケット発射場の拡張性の高さ等の地理的優位性があることから、世界トップクラスの宇宙港の適地と言われ、約40年前から航空宇宙産業の誘致を進めてきました。
「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョン実現に向けて、ロケットやスペースプレーンの発射場・実験場を整え、世界の宇宙ビジネスを支えるインフラとして、ロケット開発や宇宙産業の発展に貢献します。また、宇宙産業を核とした地方創生、ビジネス創出を目指します。
現在は新たな人工衛星用ロケット発射場LC-1と滑走路延伸工事を進めており、整備資金の一部は企業版ふるさと納税制度を活用しています。地域特性を活かした地方創生の取り組みで人口減少に歯止めがかかっていることなどが評価され、大樹町は2022年度の企業版ふるさと納税制度の内閣府特命大臣表彰を受けました。
*1:科学研究費補助⾦ 基盤研究(A) 課題番号19H00805
「⾰新技術による固体ロケットの⾼機能化と低コスト化に関する実証的研究」
研究代表者:JAXA宇宙科学研究所森⽥専任教授
*2:協力企業、大学
株式会社植松電機、株式会社IHIエアロスペース、株式会社IHIエアロスペースエンジニアリング、株式会社型善、
株式会社シンキー、細⾕⽕⼯株式会社、千葉⼯業⼤学
*3:内閣府 宇宙基本計画(令和5年6月13日改訂)
https://www8.cao.go.jp/space/plan/keikaku.html
*4:文部科学省 中小企業イノベーション創出推進事業 SBIRフェーズ3基金
引用元:PR TIMES