組織のオフィスに求める役割がグローバル規模で変化 42%が組織文化や従業員のエンゲージメント向上のために直近3年間でオフィスを変更した、または変更を予定していると回答

プレスリリース要約

CICとHarvard Business Review Analytics Servicesは、ワークスペースの活用に関する意識調査を実施し、約3年にわたる新型コロナウイルスの影響により、組織がワークスペースの活用を再考する変革の時期を迎えていることを明らかにした。多くの組織がオフィスワークとリモートワークのハイブリッド形式を採用し、ワークスペースに求められる機能も変化していることがわかった。調査結果は、オフィスワークとリモートワークの両方を採用するハイブリッド形式が支持されており、新たなワークスペースの変化に合わせて組織文化やエンゲージメントの向上が主な変更理由となっている。また、有識者コメントでは、日本のスタートアップ市場が急速に成長しており、対面の交流がスタートアップの成長に寄与する重要な要素であるとの見方が示された。
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CIC(Cambridge Innovation Center; 本社:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市、創業者CEO: Timothy Rowe)は世界50カ国以上で読まれるビジネス・マネジメント誌Harvard Business Review Analytics Servicesと共同で、ワークスペースの活用に関する意識調査(調査期間:2023年10月、有効回答数 565件)を実施いたしました。

今回の調査は、約3年にわたる新型コロナウイルスの流行が終息に向かう中、組織がワークスペースの活用についてどのように考えているのかを明らかにすることを目的としたものです。

約3年というわずかな期間で世界中の人々の働き方は大きく変容し、以前はオフィスワークが主流であった多くの組織が、リモートワークを導入するようになりました。リモートワークの普及によって、従業員のワークライフバランスの向上や居住する地域の制約の緩和、従業員の通勤手当等やワークスペースの削減によるコスト削減など、従業員と企業の双方に大きなメリットがもたらされた一方で、リモート環境下におけるセキュリティ品質の担保や労働時間の適切な管理、円滑なコミュニケーションが取れないことによる作業効率の低下などの新たな課題も明らかとなりました。

こういった背景から、現在、多くの組織が働き方を再考する変革の時期を迎えています。刷新された働き方の方針は企業によって様々ですが、一時期半数以上[1]の企業で導入されていたリモートワークは減少傾向[2]にあります。実際に、CIC Tokyoでも2022年12月時点の入居企業数236社が2023年12月時点では290社と1年間で54社増加しており、ワークスペースを活用したいと考えている企業の動向が伺えます。

 

■調査概要

対象者:企業内でワークスペースに関する決定権を有する方

有効回答数:565名

企業規模:10,000名以上(22%)、1,000名以上10,000名未満(29%)、500名以上1,000名未満(12%)、100名以上500名未満(28%)、50名以上100名未満(10%)

役職:執行役員・取締役(24%)、上級管理職(43%)、中級管理職(22%)、その他(11%)

業界:政府・NPO(15%)、製造(12%)、金融(10%)、テクノロジー(10%)、ビジネス・専門サービス(10%)、その他(43%[3])

職種:経営全般/経営管理(21%)、人事・トレーニング(15%)、その他(64%[4])

地域:北アメリカ(60%)、ヨーロッパ(16%)、アジア太平洋(13%)、中南米(6%)、中東・アフリカ(4%)、その他(1%)

 

■調査結果

今回の調査結果では、すでに多くの組織がオフィスワークとリモートワークのハイブリッド形式を採用し、柔軟性の高い働き方の導入を進めていること、そして、その働き方の変化に合わせてワークスペースに求められる機能も変化していることが明らかとなりました。

調査回答者の大多数(87%)は、働き方の選択肢としてオフィスワークとリモートワークの両方を採用するハイブリッド形式を採用しており、86%が「物理的なワークスペースに出勤する選択肢が従業員にとって有益である」と回答しています。そして、90%が「オフィスワークは、他の従業員と協力して行う必要があり、単独で遂行できないタスクに対応する従業員にとって有益である」と答えています。しかし同時に68%は「個別に行える作業はリモートで行うべきである」とも述べています。つまり、従業員はリモートワークの利便性を理解しながらも、ワークスペースの必要性を感じており、特に対面で業務を行うことで生まれるコミュニケーションに価値を見出していることがわかりました。

この変化は従業員を雇用する企業側が、所有またはリースする不動産の立地や必要面積、そして活用方法を再考するきっかけとなっています。例えば、回答者の88%が「組織はワークスペースの意志決定を戦略的な優先事項と考えるべき」、89%が「組織がワークスペース戦略をより広範なビジネス戦略に整合させることで利益を得ることができる」と考えています。また、73%は「組織としてワークスペースの意思決定に関する戦略をすでに定義しており、その大半が戦略を過去3年間の間に見直した」と回答しています。

そして、すでにワークスペースの見直しを実施、または実施中、もしくは実施を検討している組織の主な変更理由としては、42%が「組織文化やエンゲージメントの向上」、39%が「増加したリモート/ハイブリッド形式の業務に対応するため」と回答しています。

■有識者コメント

【スタートアップエコシステム協会 代表理事 藤本あゆみ氏】

直近、「オフィス回帰」というキーワードが色々なところで聞かれますが、今回の調査結果はその状況を捉えていると考えます。日本では従来、中小企業が多くリモートワークを実現するための環境整備にかけるコストがないことや、大手企業の体制が整っておらず商談が進まない、製造業などの遠隔で業務が出来ない従事者が多いなど、国特有の事情ゆえにリモートワークが進みづらい環境がありました。しかし、コロナの蔓延によって日本でもリモートワークが急速に普及し、結果として多くの人々がオフィスワークとリモートワークのそれぞれのメリット・デメリットに気づくきっかけとなりました。例えば、対面で気軽に相談が出来たり、雑談が生まれることでチームワークが強化されたりといったオフィスワークのメリットをコロナ禍で初めて実感された方も多いのではないでしょうか。

このような従業員のインサイトの変化により日本においても、ワークスペースに期待される機能がコロナ前と後で確実に変化しています。ワークスペースを選定する際には、設備や立地、コストが企業の希望要件を満たしているだけでは足りず、人事、文化などの観点においても適している必要があります。そして、ワークスペースを設けるだけでなく、対面のコミュニケーションを活発にすることや、ハイブリッドでの勤務を前提とした制度・設備設計など、所属する人々の活動を活性化するために様々な機会を検討する必要もあるといえます。

そのことから、ワークスペースの選定に関わる組織の担当者は従来よりも、より広域なステークホルダーから意見をヒアリングし、多様なニーズを満たす環境を戦略的に構築することが重要となります。そうすることで、所属する人々と組織の両者にとって最適な環境を創り上げ、最終的にはワークスペースを通じて得られる投資対効果をより大きくすることができるのではないでしょうか。

 

スタートアップエコシステム協会 代表理事 藤本あゆみ氏

2002年キャリアデザインセンター入社、2007年4月グーグルに転職し、人材業界担当統括部長を歴任。「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。その後株式会社お金のデザインを経てPlug and Play Japan株式会社にてマーケティング/PRを統括。2022年3月に一般社団法人スタートアップエコシステム協会を設立、代表理事に就任。米国ミネルバ認定講師。文部科学省起業家教育推進大使、内閣府規制改革推進会議スタートアップ・投資ワーキンググループ専門委員。

【Startup Genome Japan 代表取締役社長 西口尚宏氏】

 近年、各国のスタートアップ市場は急速な成長を続けています。その中で日本は、調達金額やExit数などにおいて、グローバルの平均値を上回っており、順調に推移しているように見えます。しかし、Startup Genomeが発表したグローバル・スタートアップ・エコシステム・レポート2023(GSER 2023)のグローバルスタートアップ・エコシステムランキングでは、東京が2021年に9位を獲得して以来、2年連続で順位を下げ、2023年には15位となっています。この結果は東京エコシステムの成長速度を他の市場が上回っていることと、東京エコシステムの課題であるグローバル化の遅れがまだ解決していないことが原因だと考えられます。

 日本がこの成長スピードに追い付くためには、スタートアップの数の増加に加えて、既存のスタートアップをより早く、より大きく成長させるための取り組みが肝要となります。2023年夏ごろから、ようやく日本でもオフィス回帰の動きが見られ、スタートアップ市場においてもスタートアップ同士やVC、自治体などといった様々なステークホルダーとの交流機会が増加していますが、その結果、2023年の東京のスタートアップエコシステムの価値は2022年と比較して6%向上[5]しました。これは、対面での交流がスタートアップの成長や拡大を加速させる重要な要素であることを示しています。

 また、今回のCICとHarvard Business Review Analytics Servicesの共同調査の結果でも同様に、ワークスペースの活用が作業効率の向上や従業員エンゲージメントの向上、そして、ビジネスの拡大といったメリットをもたらすことが明らかとなりました。つまり、企業はもちろんですが、特にスタートアップはワークスペースの活用を積極的に行うことで、偶然の出会いによる新しいアイデアの発見や人脈の偶発的な発展など、ワークスペースの多様性を武器にした様々なメリットを享受することができるといえます。こういった動きがこれから日本でより活発化していくことで、最終的に日本政府が掲げる「アジア最大のスタートアップハブとして世界有数のスタートアップの集積地になることを目指す」[6]という目標の達成にも近づくことができるのではないでしょうか。

Startup Genome Japan 代表取締役社長 西口 尚宏氏

シリアルアントレプレナー。Global Entrepreneurship Network Japanマネージング・ディレクター、Startup Genome Japan(株)代表取締役社長、上智大学 特任教授。スウェーデン国立研究所(RISE)認定イノベーションマネジメント・プロフェッショナル。既存企業からのイノベーション創出と日本のスタートアップ・エコシステムのグローバル化を推進。産業革新機構(株)の創業メンバー執行役員。内閣府ムーンショットアンバサダー、経済産業省 産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会委員、その他の政府委員会や研究会委員を歴任。ISOTC279イノベーションマネジメント米国国内委員会委員。上智大学 経済学部経営学科卒、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院卒。

【CICとは】

CICは、起業家やスタートアップ企業の成長を支援するイノベーション・キャンパスの建設・運営を行うグローバルリーダーです。1999年にケンダル・スクエアに初めて設立された同社は、現在、米国、欧州、アジアにおいて合計9万平米以上の共有ワークスペース、ウェットラボ、イベントスペースを運営しています。世界各地のCICでは、スタートアップの成長に資する最高の環境を提供することを通じて、各地域の課題を解決しようとする起業家から、グローバルレベルの課題に取り組む起業家まで、営利/非営利の分類を問わず、累計1万社以上の多様なスタートアップの事業成長に貢献しています。

[1] 総務省 令和3年版 情報通信白書 (https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd123410.html)。

[2] 日本生産性本部 第13回 働く人の意識調査(https://www.jpc-net.jp/research/detail/006527.html)。

[3] その他の項目については各職種が9%未満のため、合計値を記載。

[4] その他の項目については各職種が8%未満のため、合計値を記載。

[5] [6] Startup Genome グローバル・スタートアップ・エコシステム・ランキング2023(https://startupgenome.com/ja-JP/article/global-startup-ecosystem-ranking-2023-top-30-plus-runners-up

引用元:PR TIMES

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