資生堂、脳血流測定を用いた化粧品評価法の開発に成功 ― お客さまの化粧品塗布中の価値判断は脳血流反応と相関することを発見 ―
資生堂は、化粧品開発の過程で行う化粧品評価法において、塗布中の脳血流反応を測定することによってお客さまの価値判断を知る方法を開発しました。
従来の脳血流測定法では頭や身体を固定するため、お客さま自身で化粧品を顔に塗布することができませんでしたが、今回開発したfNIRS*1 を活用した脳血流反応を測定する方法では、お客さまが自ら化粧品を塗布している最中の脳血流反応を測定することが可能となりました。
また、今回開発した評価法を用いて測定した、人が価値判断を行う際に重要であるとされる右脳のDLPFC(背外側前頭前野)の脳血流反応と、行動経済学などにおいて商品やサービスへの支払い意思額の指標に用いられるWTP*2 の値に相関性が認められました。
*1 fNIRS = functional Near-Infrared Spectroscopy (機能的近赤外分光法):近赤外線光を生体に照射し、透過してきた光を解析することで、脳活動に連動した脳血流変化に伴う、血中のヘモグロビン濃度の変化を脳活動としてとらえる方法。
*2 WTP(Willingness To Pay):商品やサービスに対してどのくらいの金額を支払いたいかの最大金額
なお、本研究成果(中央大学との共同研究)は「第84回 SCCJ研究討論会」(日本・大阪)(2019/7/18)にて発表しました。
《化粧品塗布時のDLPFC(背外側前頭前野)の脳血流反応と支払い意思額WTPが相関》
一般女性25名に塗り心地・仕上がり感の異なる6種類の口紅のサンプルを使用してもらい、塗布中の脳血流反応を測定しました。その結果、価値付けなどに直接関与していることが知られている右脳のDLPFC(背外側前頭前野)が反応し、WTPの数値との間に相関性が認められました(図1、図2)。
なお、同じ一般女性25名に対するアンケートによって得られた6種類の口紅に対する評価とWTPの数値の間にも有意な相関性が認められました。
これらの結果から、右脳のDLPFC(背外側前頭前野)の脳血流反応を測定することにより、塗布中の化粧品に対する価値付けについての評価を知ることができる可能性を見いだしました。
《化粧品分野への感性・心理学研究の活用》
今回の研究結果から、脳血流反応を直接測定する方法によって、お客さまが化粧品を使用中に判断している価値について直接測定できる可能性を見いだしました。今後もお客さま自身の潜在的な価値判断を脳反応からとらえることでお客さまの深い感性に響く、より良い商品の開発を目指していきます。
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