教職員アンケート結果公開!奈良教育大学附属小学校の「不適切指導」のニュースについて
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プレスリリース要約
2024年1月、奈良教育大学附属小学校にて、長年に渡り履修漏れや授業時間の不足といった学習指導要領に沿わない指導がなされてきたという報道がありました。
・毛筆の授業を筆ペンで実施
・図工での教科書の不使用・教える内容の「年次違い」
・教科としての道徳の不実施(全校集会で「道徳的指導」を実施)
・音楽での「君が代」の指導の不実施
などがあったとのことです。
フキダシでは、この件について現職の教職員の方がどのように思っているか、緊急アンケートを実施しました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年1月21日(日)〜2024年1月29日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :140件
アンケート結果
※理路整然とまとまった文章でなくて構いません。もやもやを呟いたり、感情を吐露するような文章でも結構です。
※ 注
・1つの投稿に複数の観点が含まれる場合、該当の箇所のみを抜き出して掲載しています。
・1つの投稿の別の箇所を複数の観点から紹介している場合があります。
・投稿中にある法律上の解釈等は回答者の見解でありSchool Voice Projectの公式見解ではありません。
・詳細は全文ダウンロード等でご確認ください。
観点① 報道された奈良教育大学附属小学校の状態について
報道された奈良教育大学附属小学校の状態については、擁護的な内容のコメントが約60件、批判的な内容のコメントとその他の内容のコメントが約40件ありました。種類別では、調査結果や授業内容についての擁護的コメント、より詳しい情報がないと判断できないとするコメント、同校内での教員内の対立について言及したコメントがそれぞれ約20件ずつと多く見られました。
<擁護的意見>
調査結果・授業内容について
・どこでもやっている教員裁量での指導上の工夫に当てはまるものが多いのではないのかと思う。調査公表された不適切な指導内容が、あまりにも瑣末な問題すぎてびっくりした。【小学校・教員】
・学習指導について、具体的には外国語科の代名詞の指導は、何を根拠にどう判断して『不足している』としたんでしょうか?代名詞を使わない外国語の授業などありえません。本当に不足しているのでしょうか?また3年国語のローマ字指導の不足について、採択教科書の標準時数を下回っていたと書いてありますが、こんなものをもって未履修の判断をするなどあり得ません。ローマ字の指導について、概念的な解説と演習は、2単位時間もあれば十分です。その後は、具体的な場面を通して、ことあるごとに指導していくのです。
調査のあり方の開示と、妥当性の検討について、強く求めたいです。
私がわかる限りの調査のあり方を見ると、現場で子供に力をつけようと奮闘している教員を馬鹿にしていると感じています。【小学校・教員】
学校のガバナンスについて
・奈良附属の教育実践には報道にあること以上の民主的で深い内容があり、一公立の教諭としては励まされてきました。会見での校長も納得いきませんでした。ガバナンスの問題なのでしょうか。民主的なリーダーシップの問題はなかったのでしょうか。【小学校・教員】
・通常の組織では、トップが勝手に決めるということはあり得ないと思いますし、過去に対立があって法改正されたと聞いていますが、たとえ職員会議が諮問機関であったとしても、民主主義の国である以上、教職員の声を無視するのは法律にも憲法にも反しているのではと思います。【小学校・教員】
<批判的意見>
調査結果・授業内容について
・まずは法律は守った上で、独自の教育活動をする話です。
それを、国立附属だからといって、先進的実験的な授業をするために、ルールを蔑ろにしていいとはいえないはずです。
もし、教科書通りにしないというのであれば、事前に、しかるべきところに許可を得て免除してもらいすべきことです。【中学校/高等学校・教員】
・国立の学校である以上、君が代を教えるべきですし、学習指導要領に定められたことを行うべきです。
国立の特殊性も理解できます。研修等も県や市とは別になり、どこまでチェックが行われてきたかはわかりません。また、教育実習を多く受け入れることで教育課程通りにはいかないことも理解できます。
ただ、結果的に生徒に補修授業をするなど1番あってはならない生徒に負担をかけることになったことには十分に考えなければならないと思います。【中学校・教員】
学校のガバナンスについて
・職員会議は、
1 小学校には、設置者の定めるところにより、校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができる。
2 職員会議は、校長が主宰する。
これは、法令根拠なので、奈良附属のやっていたことは、だめです。校長が主宰です。【小学校・教頭】
・教科書を使用することも、職員会議の件も教員であれば常識です。それを継続的に知らないふりをしていることは、意図的にきまりを守らなかったことにほかなりません。
その意識がなく、いい教育をしているからといって、ルールを守らず理解を得ようとする考え方は浅いといわれてもやむを得ないです。【中学校/高等学校・教員】
観点② そもそもの学校教育のあり方について
そもそもの学校教育のあり方については、奈良教育大学附属小学校の以前までの体制も仕方ない・理解できるといった擁護的な内容のコメントが約110件と、批判的な内容のコメント(約10件)を大きく上回りました。種類別では、指導要領についてのコメントが約60件と多く、特に「指導要領はすべての内容を厳密に守るべきものなのか」といったコメント(約30件)や「現行の学習指導要領の量が多いためもれなく実施することは困難」といったコメント(約20件)が目立ちました。
<擁護的意見>
学習指導要領の位置づけ・法的拘束力等について
・学習指導要領を一生懸命考えてくれたのはわかるし、「教科書をある程度やってね」はわかるけど、
ー教科書を教えることは手段であって目的ではない
ーもし、必須にするなら、学びの多様化学校や不登校はなんなのか
は考えてほしいなと思います。【中学校・教員】
・カリキュラムマネジメント、教科横断的ってなんだったの?って感じです。
今回のことは学習指導要領の「解釈の仕方」の問題と捉えています。【小学校・教員】
学習指導要領の量について
・あまりの時数の少なさには問題があるかもしれませんが、国の時数がそもそも多すぎて、各現場では表上の時数と実際の時数がズレているのは、多くの職場で書かれています。もし時数通りにしたら、運動会や水泳で体育はほとんど終わり、学芸会などの発表会、六年生を送る会や修学旅行の準備の時間は取れません。つまり行事はできません。【小学校・教員】
・カリキュラムオーバーロードと言われているように、子どもにとっても教師にとっても明らかに内容が許容量を超えているのに・・・そして未だに働き方改革が進んで居ない現状なのに、指導要領を守れとは現場に何を求めているのかが分からなくなります。溢れる学習量をこなすために、子どもにとっても教師にとってもつらい状態が働き方改革を停滞させているのではないでしょうか。【小学校・教員】
学校のガバナンスについて
・そもそも校長(管理職)の権限を強くしてトップダウンで教育のあり方が変わっているという公立学校の仕組み自体に問題を感じているので、職員会議が最高決定機関である、ということは、本来どの学校も目指すことだと考えている。職員会議が校長の判断でひらいてもひらかなくてもいい、ひらいたとしてもそこで出た意見を取り入れるか取り入れないかも校長に任せる、という法律自体がおかしいのであって、奈良教大附属小は民主的な職場づくりをしようとしていたのではないか、と見ている。【高等学校・教員】
国立学校のあり方について
国立の附属小学校であれば、先進的な取組を実践して、国に還元するのが役割ではないでしょうか。学習指導要領の内容は、全てやらなければならないとは考えていないと、つい最近文科大臣がおっしゃっていませんでしたか?逆に国に提言してもらいたいぐらいです。こんなことで、全国の附属小学校が点検されるなんて、信じられません。【小学校・教員】
とても違和感を覚えています。報道されている内容はそんなに「不適切」な指導なのか?この程度と言っては何ですが、どこの学校でもよくあることで、時間など制限がある中で、柔軟に対応しているだけなのではないでしょうか?それなのに、なぜいま、この奈良教付属小学校だけがこんなに取り上げられて糾弾されているのか?特定の誰かや団体の強い意図を感じます。【高等学校・教員】
その他の擁護的意見
・とても違和感を覚えています。報道されている内容はそんなに「不適切」な指導なのか?この程度と言っては何ですが、どこの学校でもよくあることで、時間など制限がある中で、柔軟に対応しているだけなのではないでしょうか?それなのに、なぜいま、この奈良教付属小学校だけがこんなに取り上げられて糾弾されているのか?特定の誰かや団体の強い意図を感じます。【高等学校・教員】
<批判的意見>
・学習指導要領に沿って授業をするのは、当たり前のことです。
学習格差を生まないために学習指導要領があるのでは、ないでしょうか?【高等学校・教員】
・我々が附属に期待するのは、学校の取り組みを通してこれからの地域の公立学校が進んでいくべき方向性を示してもらうことであり、それが附属学校の使命なのではないのか。「附属でこんなことやってた、うちでも!」となってない現状があるのはなぜか。附小は公立学校ではないが、私立学校でもない。指導要領を遵守することは、附小の良さを否定することなのか?指導要領の枠組みの中で最大限できることをやる、という姿を見せてほしかった。附属学校は、思想に関係なく、通っていない子も含めて全ての子どもとその子どもに関わる教師のためにあるのではないのか。【小学校・教員】
観点③ その他(文科省の対応、報道のあり方など)
<文科省に対する意見>
・この手のニュースは数年ごとに浮上する。
その学校がやり玉に挙げられているように思うし、文科省、教育委員会からの「言う通りやらなければ、さらし者にするぞ」という無言の圧力にも感じる。【特別支援学校・教員】
・生徒を真ん中においた教師たちの懸命な教育実践に対し、「学習指導要領」を金科玉条のごとく扱いその忠実な実践を強要するものであり、教育委員会と文部科学省による介入以外の何物でもないと考える。教育の画一化と管理統制をいっそう加速させるものである。【特別支援学校・教員】
<報道・マスコミに対する意見>
・記事を目にした時の最初の印象は、小学校の取組について重箱の隅をつつくような指摘に窮屈さを感じました。
内部の告発だったというニュースもあり、その組織のコミュニケーションの苦しさを感じる面もありましたが、これが記事になり世に広がることで、そのコミュニケーションの問題以上に「不適切指導」という言葉だけが独り歩きするように感じました。
記事をきっかけに、学習指導要領と私たち学校教育の取組の関係を捉え直してみると、やはりその指摘と言葉の独り歩きによって、今後わたしたちの現場が、報道を見聞きした方によって、重箱の隅をつつくような指摘を受けたり、揚げ足をとられるような注意をされるようなことが起こらないか心配です。
また、この報道の表面的な話題によって、わたしたち現場の者が萎縮したり「学習指導要領からはみ出さないようにしなければならない」のような、発展的実践や研究を阻害するようなことがあっては、学校教育にとっては大きな損失になるようにも感じています。【小学校・教員】
・とても政治的な背景のニュースで、これを見た子ども達の心情が心配。
教育課程の編成について、世論が受ける印象と実際のところは違うので、偏向報道と言われる所以だと思いますが、注目しないといけない部分だと思います。【小学校・教員】
全体的には、報道で「不適切」とされた奈良教育大学附属小学校の以前の状態を擁護する立場の意見が多く、全体の約8割を占めていました。また、今回の一連の報道を通じて「そもそもの学校教育のあり方」を論じる意見も多く、全体の約6割はそのような観点での内容を含んでいました。
ほかにも、今回の文科省の対応や報道のあり方に言及する意見なども多く見られ、具体的な教育実践から将来的な教育や社会のあり方にいたるまで、いつも以上に多様な観点からの意見が寄せられたことが特徴的でした。
※WEBメディア「メガホン」の記事( https://megaphone.school-voice-pj.org/2024/02/post-4390/ )より、自由記述の内容がご覧いただけます。また全回答がデータもDLしていただけます。
運営団体:NPO法人 School Voice Project
学校現場の声を「見える化」し、対話の文化をつくるプロジェクト。児童生徒も教職員も「自分の思いや声には価値がある」「私には現実を変えていく力がある」と実感できる学校づくりのために、教職員WEBアンケートサイト「フキダシ」と学校をよくするWEBメディア「メガホン」の運営、政策提言・ロビイング活動を行なっています。
【団体名】NPO法人 School Voice Project
【代表理事】大野 睦仁
【設立】2022年8月19日
【所在地】〒103-0004 東京都中央区東日本橋二丁目28番4号 日本橋CETビル2階
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引用元:PR TIMES