【知の国際交流】生物多様性保全と持続可能な資源利用を目指して 摂南大学が二国間交流事業(ベトナムとの共同研究)を開始
プレスリリース要約
本研究は、ゲノム情報を駆使した分子系統学的・系統地理学的アプローチによる、ベトナム産植物の最終氷期における逃避地(レフュージア)の特定を目的としています。本研究には、国立科学博物館や昭和大学などに所属する若手日本側研究者8人と、ベトナム国立自然博物館などに所属する若手ベトナム側研究者8人の計16人が参加し、日越両国の研究者が専門とするコケ植物やシダ植物、被子植物を対象に、インド・ビルマ生物多様性ホットスポットの一部であるベトナムの植物相解明に取り組みます。
【本件のポイント】
● 薬学部の伊藤講師が代表を務めるベトナムとの国際共同研究を開始
● 世界有数の豊富な生物相を持つベトナムの生物多様性を解明し、
その保全と持続可能な生物資源利用につながる知見を得る
● 日越若手研究者の持続的な研究交流に資することが期待される
- 研究の背景と目的
ベトナムは、インド・ビルマ生物多様性ホットスポットの中核をなしている、世界有数の動植物種を保有する国です。この地域の生物多様性を保護し、かつその遺伝的な多様性を理解することは、地球規模での生態系の保全につながると期待されています。この度の国際共同研究では、卓越したゲノム解析技術を持つ日本側研究者が、現地の植物に精通するベトナム側研究者とタッグを組み、未知の多様性解明に大きく貢献します。
- 日本学術振興会 二国間交流事業について
日本学術振興会 二国間交流事業は、個々の研究者交流を発展させた二国間の研究チームの持続的ネットワーク形成を目指し、日本国内の優れた研究者が相手国の研究者と協力して行う共同研究・セミナーの実施に要する経費を支援するものです。2015年より親交のある、日本側代表者の伊藤講師とベトナム側代表者のDo Van Truong(ドオ・ヴァン・チュン)博士の研究者交流を発展させた本研究は、日本学術振興会とベトナム科学技術アカデミーとの学術の国際協力に関する合意に基づいて行う国際共同研究として採択されました。
- 研究概要
研究課題名 :ベトナム北部に最終氷期の逃避地を探る:分子系統学的・系統地理学的アプローチ
JSPS-VAST Bilateral Joint Research Projects (120249602)
実施期間 :2024年4月1日~2027年3月31日(3年)
参加者数 :日本側8人、ベトナム側8人(代表者は除く)
実施目標 :日越両国の研究者が共同で現地植物調査を行い、ゲノム情報を駆使して、
特にベトナム北部産植物の系統地理学的起源や遺伝的多様性を明らかにする
日本側代表者 :摂南大学 薬学部 伊藤優
日本側参加者 :兵庫教育大学 理数系教科マネジメントコース 山本将也
昭和大学 富士山麓自然生物研究所 藤原泰央
東北大学 農学部 高橋大樹
独立行政法人国立科学博物館 植物研究部 井上侑哉
島根大学 生物資源科学部 須貝杏子
富山県立大学 工学部 孫田佳奈
北海道大学 総合博物館 首藤光太郎
東京都立大学 理学部 小栗恵美子
ベトナム側代表者:ベトナム国立自然博物館 生命科学研究センター Do Van Truong
- 研究代表者 摂南大学薬学部講師 伊藤優
研究分野:ライフサイエンス / 多様性生物学、分類学
学生時代より一貫して水生植物の多様性研究に従事し、世界に広く分布する植物種群の研究から、長距離種子散布の謎を解明したり、遠く南アフリカで新種を発見したりしてきました。本研究では、ベトナム産水生植物の地理分類に加えて、ベトナム産薬用資源樹種の遺伝的多様性の解明にも取り組みます。
▶経歴
千葉大学大学院自然科学研究科で修士号、東京大学大学院理学系研究科で博士号を取得後、ハンガリー・西ハンガリー大学(ハンガリー政府奨学給付金奨学生)、カナダ・サスカチュワン大学(山田科学振興財団 長期間派遣研究員)、ニュージーランド・カンタベリー大学(日本学術振興会 特定国派遣研究者)、中国・シーサンバンナ熱帯植物園(中国科学院 国際人材制度)での研究活動を経て、2017年に摂南大学薬学部に着任し、2020年より講師として教鞭を執っています。
▶著書
・『身近な薬用植物ものしり帖』伊藤優(単著)、ベレ出版、2023年
・“A Field Guide to Aquatic Plants of Myanmar”Yu Ito(共著)Natural History Publications Borneo、2019
・『日本の野生植物改訂版 第1巻 ソテツ科~カヤツリグサ科』伊藤優(分担)平凡社、2015年
▶メディア報道
・2023年8月5日 NHKウイークエンド関西「らんまん気分で大阪の植物博士と珍しい草花探し」
・2022年2月8日 朝日新聞「がん研究したくて抗がん剤原料の植物調査→分類見直しの発見」
引用元:PR TIMES