【医師360名に聞く、「医療の2024年問題」に関する実態調査】約4割が残業時間の上限規制範囲内で勤務できないと回答、約2割は規制に賛同せず。

プレスリリース要約

医師の働き方改革に関する実態調査結果によれば、約4割の医師が上限規制の範囲内で勤務できないと回答し、約2割が上限規制に賛同しないという傾向が見られた。また、時間外労働の上限規制により医療の質が低下すると感じる医師が約5割であり、就業規則や勤務先での取り組みに関する認識が不十分であることも浮き彫りになった。この調査結果から、医師不足解消や勤務体制の改定が必要であり、現場の医療スタッフに寄り添ったルールや制度の整備が重要とされている。

調査の結果、約4割が上限規制の範囲内で勤務できないと回答したほか、約2割が時間外労働の上限規制に賛同しない、約4割超がどちらともいえないと回答するなど、上限規制の施行にあまり前向きではない傾向がみられました。

また、約5割が時間外労働の上限規制により、医療の質が低下する・やや低下すると回答しました。勤務体制の改定に取り組むべきとの声があがる一方で、約6割が勤務先の就業規則を見たことがない状況であることも明らかになりました。勤務先で長時間労働を改善するためのルール策定がされていると回答したのは約2割でした。

さらに、時間外労働に関する勤務先の対策について聞いた結果、約5割が勤務先で時間外労働に関して対策が何も行われていない・わからないと回答しました。時間外労働が発生する原因については、医師不足や救急の受け入れや急患対応、担当患者の容態急変時の対応が原因であるとの回答が上位を占めました。上限規制の施行によって心配することについては、約5割が申請を行わない残業(サービス残業)の誘発と病床のひっ迫、救急搬送の困難を挙げました。

これらのことから、『医療の2024年問題』が迫る今、人手不足改善のためにも医師をはじめとする現場の医療スタッフに寄り添ったルールや制度を整備し周知・運用することが重要だと考えられます。

  • 主な調査結果

①   『医師の働き方改革』を「知らない・よくわからない」24.5%、「知っている」75.6%。

②   時間外労働の上限規制に「賛同しない」21.7%、「どちらともいえない」43.9%、「賛同する」34.4%。

③   時間外労働の上限規制施行後、上限規制の範囲内で「勤務できない」39.7%、「勤務できる」60.3%。

④   48.4%の医師が、勤務先で時間外労働の上限規制に関する対策が何も行われていないと認識。

⑤   時間外労働の上限規制によって医療の質は「下がる・やや下がる」54.4%、「変わらない」30.0%、「向上する・やや向上する」15.6%。

⑥   時間外労働の上限規制によって心配することは、最多が「申請を行わない残業(サービス残業)の誘発」47.8%、次いで「病床のひっ迫や救急搬送の困難」46.1%。

⑦   時間外労働が発生する原因は、最多が「医師不足」56.9%、次いで「救急の受け入れや急患対応」54.7%、「担当患者の容態急変時の対応」40.3%。

⑧   時間外労働の上限規制に対し、勤務先で取り組むべきことは「医師不足の解消」44.7%で最多。次いで「勤務体制(当直体制や休暇取得)の改定」30.3%。

⑨   56.4%が勤務先の就業規則を「見たことがない」、副業可否や社内ルールについて把握せず。

⑩   長時間労働を改善するための取り組みを行なっている勤務先は22.8%。

  • 詳細

①   『医師の働き方改革』を「知らない・よくわからない」24.5%、「知っている」75.6%。
「2024年4月から医師の時間外労働(残業)が上限規制される『医師の働き方改革』について知っていますか」の質問に対し回答は、最多が「知っている」75.6%、次いで「聞いたことはあるがよくわからない」18.1%、「知らない」6.4%で、24.5%の医師が『医師の働き方改革』に関して理解できていない実態が明らかになった。

②   時間外労働の上限規制に「賛同しない」21.7%、「どちらともいえない」43.9%、「賛同する」34.4%。

 「2024年4月から施行される医師の働き方改革で設けられる『勤務医の時間外労働の年間上限規制』に賛同していますか」の質問に対し回答は、「賛同しない」21.7%、「どちらともいえない」43.9%が、「賛同する」34.4%だった。約6割が上限規制に後ろ向きである様子がうかがえる。

賛同する理由や賛同しない理由について聞くと、以下の回答が寄せられた。

『賛同する理由』

・医師の過労死がなくなってほしいから(60代・男性)

・疲労により医療ミスをおこすのはよくないから(40代・女性)

・医師も人間らしい生活ができるようにすべき(40代・女性)

『賛同しない理由』

・仕事が回らなくなるから(30代・女性)

・隠れ残業が増えるから(40代・女性)

 ・緊急時に対応ができない(60代・男性)

③   時間外労働の上限規制施行後、上限規制の範囲内で「勤務できない」39.7%、「勤務できる」60.3%。

「2024年4月に時間外労働(残業)の上限規制が施行された後、この上限規制の範囲内で勤務ができると思いますか」の質問に対し回答は、「勤務できない」39.7%が、「勤務できる」60.3%だった。このままでは約4割が時間外労働の上限規制違反となる可能性がある。

また、「上限規制に範囲内で勤務できないと思う」と回答した人に理由を聞くと、以下の回答が寄せられた。

・一人当たりの仕事が多く、短い時間では終わらない(60代・男性)

・仕事量が減るわけではない(50代・女性)

・仕事量は減らないから(60代・男性)

・サービス残業をする(60代・男性)

・勤務はできるが、時間外の急患を診療するかどうかは個人の裁量権に任されるべきだと思う(50代・男性)

④   48.4%の医師が、勤務先で時間外労働の上限規制に関する対策が何も行われていないと認識。

「勤務先で、時間外労働(残業)の上限規制に対して何かしらの対策がされましたか」との質問に対し回答は、最多が「何も行われていない・わからない」48.4%、次いで「医師など医療スタッフの増員」17.5%、「勤怠管理の徹底」16.7%だった。

⑤   時間外労働の上限規制によって医療の質は「下がる・やや下がる」54.4%、「変わらない」30.0%、「向上する・やや向上する」15.6%。

「時間外労働(残業)の上限規制によって、医療の質はどうなると思いますか」との質問に対し回答は、「低下する」27.5%、「やや低下する」26.9%、「向上する」5.0%、「やや向上する」10.6%、「変わらない」30.0%で、半数以上となる54.4%が医療の質が低下すると回答した。

「医療の質が低下する・やや低下する」と回答した人を対象に理由を聞くと、以下の回答が寄せられた。

・患者一人あたりの診療時間が減るから(60代・女性)

・経験不足になるから(60代・男性)

・ 医師は1人前になるのにできるだけ多くの経験を積む必要があるが、仕事時間が短いと知識も技術も成長が遅れ、質の悪い医師が増えてしまう(60代・男性)

・ 時間がかけられないから(50代・男性)

・勤務時間が制限される分、1日あたりの外来患者の対応数に制限がかかってしまうから(50代・男性)

・今でも研究医の勤務時間制限で医師の質は著しく低下しているのでこれを助長するだけだ(60代・医師)

⑥   時間外労働の上限規制によって心配することは、「申請を行わない残業(サービス残業)の誘発」47.8%、次いで「病床のひっ迫や救急搬送の困難」46.1%。

「時間外労働(残業)の上限規制によって心配していることは何ですか」との質問に対し回答は「申請を行わない残業(サービス残業)の誘発」47.8%、次いで「病床のひっ迫や救急搬送の困難」46.1%、「収入の減少」33.3%、「主たる勤務先による副業や兼業の禁止」31.9%だった。

⑦   時間外労働(残業)が発生する原因は、最多が「医師不足」56.9%、次いで「救急の受け入れや急患対応」54.7%、「担当患者の容態急変時の対応」40.3%。
「時間外労働(残業)が発生する原因は何だと思いますか」との質問に対し回答は、最多が「医師不足」56.9%、次いで「救急の受け入れや急患対応」54.7%、「担当患者の容態急変時の対応」40.3%だった。救急の受け入れや患者の急変時の対応など、やむを得ない理由が上位で残業が発生していることからも、医師不足の解決が求められる。

⑧   時間外労働の上限規制に対し、勤務先で取り組むべきことは「医師不足の解消」44.7%で最多。次いで「勤務体制(当直体制や休暇取得)の改定」30.3%。

「時間外労働(残業)の上限規制に対し、勤務先で取り組むべきことは何だと思いますか」の質問に対し回答は、最多が「医師不足の解消」44.7%、次いで「勤務体制(当直体制や休暇取得)の改定」30.3%、「宿日直勤務の内容や制度の見直し」29.7%だった。

⑨   56.4%が勤務先の就業規則を「見たことがない」、副業可否や社内ルールについて把握せず。

「勤務先の就業規則を見たことがありますか」との質問に対し回答は、「見たことがない」56.4%、「見たことがある」43.6%だった。上限規制の施行に対し、勤務体制(当直体制や休暇取得)の改定に取り組むべきとの声があがった一方で、社内規程や社内ルールなどを把握できていない様子がうかがえる。

就業規則を「見たことがある」と回答した人に理由を聞くと、以下の回答が寄せられた。

・入社時、労働条件確認のため(50代・男性)

・働き方改革との整合性の確認のため、最近見た(50代・男性)

・副業ついて最近確認した(50代・男性)

・待遇の確認のため(50代・男性)

・手当の確認のため(60代・男性)

⑩   長時間労働を改善するための取り組みを行なっている勤務先は22.8%。

「勤務先では医師の長時間労働を改善するための院内ルールの策定など、何か取り組みが行われていますか」の質問に対し回答は、「行われている」22.8%、「わからない」33.9%、「行われていない」43.3%だった。取り組みがされていない・わからないが77.2%で、医師の長時間労働を積極的に改善しようとする動きがまだ少ない様子がうかがえる。

  • 考察

政府は2024年4月に医師の時間外労働を年間960時間に上限規制することで、『医師の働き方改革』をさらに推し進め、医師の長時間労働の改善や健康を確保しながら勤務できる環境の実現を目指しています。
しかし、今回の調査結果から、2024年1月中旬時点で医師に対して病院側の対応が追いついていないだけでなく、上限規制を守ることができないと諦めている医師が多くみられました。このままでは上限規制後、規制違反となってしまう病院が出てくる恐れがあります。また、上限規制を守るために申請を行わない残業(サービス残業)が医師にとって当たり前になったり、病院側も容認したりする状態を招いてしまう可能性もあります。

 医療は命に関わる仕事であることや、勤務体制が複雑であることなどから、規制やルールを設け、運用していくことは他業種と比較すると難しい面があります。しかし、医師不足改善のためにも医師をはじめとする現場の医療スタッフに寄り添ったルールや制度を整備し周知・運用することは、働きやすい環境の構築や経営リスクの低減やガバナンス向上につながります。『医療の2024年問題』が迫る今、医療業界が対応すべきことの一つだと考えられます。
今後も当社は人々が安心して働ける世界をつくるため、社内規程管理クラウド「KiteRa」の提供を通じて従業員の働き方改革の実現に取り組んでまいります。

  • 調査概要

調査名:医師の働き方に関する実態調査
調査期間:2024年1⽉17日~1月19日

調査⽅法:インターネットを利⽤したアンケート調査

有効回答数:360名

対象条件:全国の20代以上の医師(調査対象の年齢・性別比率は以下の通り)

  • 株式会社KiteRaについて

「安心して働ける世界をつくる」をミッションに掲げ、安心して働くためのルール(仕組み)である社内規程をTechnology の力で簡単に正しく運用できる社内規程作成クラウドサービス、企業向けの「KiteRa Biz」と、社労士向けの「KiteRa Pro」を展開しています。今後も社内規程を通じて誰もが安心して働くことのできる世界の実現を目指します。

名称:株式会社KiteRa
所在地:東京都港区北青山1-2-3 青山ビル7 階
代表者:代表取締役CEO 植松隆史
設立:2019 年4 月1 日
事業内容:社内規程クラウド「KiteRa」の企画・開発・運営
URL:https://kitera-cloud.jp/
主要サービス:
社労士向けSaaS「KiteRa Pro」 https://kitera-cloud.jp/pro/
企業向けSaaS「KiteRa Biz」 https://kitera-cloud.jp/biz/

引用元:PR TIMES

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